西国巡礼と四国遍路の再考察と現在の巡礼者の動き(その1)

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タイトル別名
  • サイゴク ジュンレイ ト シコク ヘンロ ノ サイ コウサツ ト ゲンザイ ノ
  • Saigoku and Shikoku Pilgrimages Revisited : Contemporary Trend (1)

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抄録

私が,『巡礼の社会学』(1970年: ミネルヴァ書房)を刊行してから今年でちょうど20年になる。この20年間で,社会学者や民俗学者,更には歴史学者から私の論文に対して,その研究内容の不十分さや誤っている個所を,彼等の著書や雑誌の論文を通して,いろいろな側面から指摘された。例えば,西国巡礼の納札は,33ヵ寺の札所にしか見られないと,私は考えていたので,江戸時代の納札の調査も西国霊場のみに限って行なった。その後の「元興寺文化研究所」の人々などの研究によると,札所に所属していない寺,すなわち当麻寺,桑実寺などからも多数の納札が発見された。同研究所の調査によると,霊場以外の寺から発見された納札も出身地別に分類したところ,私の調査した結果とは異なった結論になったと言う。そこで,両者の結論の違いが,どこから生じたかということを私は解明した。その違いは,江戸時代前期の巡礼者達は,関東地方などの東国人が圧倒的に多かったが,幕末になると長州や肥前長崎などの西国の人々が多くなったように,時代によって巡礼者の出身地が異なるからである。次に,石山寺で発見された室町時代の納札に[順礼聖]という文字が刻み込まれていた。「巡礼ブーム」が始まった室町時代後期の「巡礼の大衆化」に,現在の“ツアーの添乗員”のような役割を果たした[順礼聖]について,[高野聖]と対比しながら論述した。最後に,西国霊場の巡拝者たちが,昭和45年と20年後では,非常に異なっていることが二つあったことを明らかにした。第一は,昭和45年には一年間の巡礼者の数が3万名であったのが,昭和50年代からその数が急激に増大し,現在では8万名近い人々が霊場を巡っている。第二は,年齢層に変化があらわれた。すなわち,年齢別に見ると,昭和45年には60歳代の巡礼者が一番多かった。ところが今回の調査では,巡礼者の割合が一番多かったのは50歳代であり,次に多いのは40歳代であった。そして,60歳代は第三位に落ちていた。

It has been twenty years since "Sociological Study of Religions Pilgrims" was published by the author. This paper attempts to respond to the critisisms given ever since. It also clarifies the contemporary patterns of both Saigoku and Shikoku pilgrims that have changed in the last two decades: The number of pilgrims have doubled and more than half of them are in their 40's and 50's replacing the ones in their 60's.

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