将軍側近柳沢吉保の政治権力についての一考察 ―対馬藩主宗義方との初対面を例に―

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本論文では、5代対馬藩主宗義方が、元禄10年(1697)8月3日に、5代将軍徳川綱吉の側近柳沢吉保へ初めて面会する過程を具体的に見ていくことにより、吉保の政治権力の実態を解明した。将軍綱吉は、御家を無事に次代に存続させるという大名家の最重要事項について、自ら主導し、不適切な場合は厳しく処断した。そのため諸大名は、将軍の側近として最もその意向を知り、影響を与える立場にいる吉保と、良好な関係を築くことを必要とした。義方が、吉保との初対面に至るまでに、慎重に多数の願い出や打ち合わせを 重ねていく過程や、これによりその後の柳沢家との交際の状況が変わってくることを考え合わせると、大名にとって、吉保の権力がいかに強大だったかがわかる。その一方で、当日の短時間の型通りな対面の様子からは、諸大名と必要以上の関係を築くまいとする、吉保の姿勢が見えた。吉保はその権力を振り回すことはなかったのである。

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