対日直接投資とコーポレートガバナンス : 国の「稼ぐ力」を高めるために

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  • Inbound Direct Investments and Corporate Governance

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抄録

・ 2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」は、日本経済活性化策の一環として、対日直接投資を2020年までに35兆円に倍増させるという目標を設定している。2013年末の対日直接投資残高は約18兆円、GDPの4%弱と推計されているが、これは諸外国と比べても、日本の対外直接投資残高と比べても異常に少ない水準である。・ 日本企業の国内営業利益は過去20年間停滞しているが、上場企業は積極的に対外直接投資を増やし、連結営業利益の相当部分を海外で稼ぐまでになっている。これは、日本企業による営業利益と雇用の創造が海外に移転したこと(いわゆる「空洞化」)を示唆しており、それを相殺すべき外資による日本における営業利益と雇用の創造がなかったことが、日本経済停滞の一因となったものと考えられる。・ 国の「稼ぐ力」にとって重要なのは日本国内における活発な財・サービスの生産活動であり、そのためには日本の大企業の国内回帰を促すとともに、先進的な外国大企業による対日直接投資を促進することが重要である。対日直接投資は、雇用とそれに相応する営業利益、ひいてはGDPの増加をもたらすだけでなく、技術や経営ノウハウの移転(スピルオーバー効果)によって、生産性(一人当たりGDP)の向上に寄与する潜在力を有している。・ 対日直接投資の増加に真に有効な施策の大部分は、大企業やベンチャーの国内での経済活動を活発化させ、産業の新陳代謝を促進する施策と重なり合う。日本を「世界で一番ビジネスがしやすい国」にするための、規制改革、法人税引下げ、経済連携の推進等の施策は非常に重要であるが、もっとも重要なのは、コーポレートガバナンス改革による日本企業が売り手となるM&A(内-内、外-内)の活性化であろう。テクニカルには、M&A関連法制・税制(特に三角合併税制とキャッシュマージャー税制)の改革も極めて重要である。・ 従来、日本は外国企業による日本企業の買収には非常に警戒的であったが、外資も含め「日本で投資を行い雇用を創出する企業が良い企業である」というマインドセットへの転換が重要である。そのマインドセット変革のカギを握るのは、アベノミクスによる企業と投資家を巻き込んだコーポレートガバナンス改革の成否である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050569015532626432
  • NII論文ID
    120006926912
  • NII書誌ID
    AA1285312X
  • HANDLE
    10086/31017
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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