アクティビスト・ヘッジファンドと企業統治 : 「所有と経営の分離」の終わりの始まり?

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  • Activist Hedge Funds and Corporate Governance

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抄録

・ 米国でアクティビスト・ヘッジファンドが猛威を振るっている。もはやアップル、マイクロソフト、プロクター&ギャンブルといった時価総額最大級の企業でさえ、アクティビスト・ヘッジファンドの射程から逃れられない。その背景には、大手年金をはじめとする機関投資家が、資金、議決権の両面からアクティビスト・ヘッジファンドの活動を本格的にサポートし始めたことがある。・ 上場企業における「所有と経営の分離」は、機関投資家への株式保有の集中にもかかわらず、経営介入のコスト負担問題から、長らく実態として継続していたが、洗練されたアクティビスト・ヘッジファンドの台頭がその構図を変えつつある。機関投資家の資金流入でファンドサイズが巨大化したアクティビスト・ヘッジファンドは、集中投資のバリュー投資家としての特性と相俟ってコスト負担問題を解決し、機関投資家のエンゲージメント活動の「エージェント」として影響力を増している。機関投資家の議決権の影響力をアクティビストが覚醒させたことにより、会社の経営方針をめぐる株主の影響力が増しつつあり、「所有と経営の分離」は修正を迫られつつある。・ 経営者の側も、このような大局観を踏まえたうえで、アクティビスト・ヘッジファンドに対処していく必要がある。アクティビストの洗練度上昇や実証研究の結果により、もはや「企業の長期的利益を害する短期志向」とのレッテル貼りでは投資家の共感を得ることが難しい。アクティビストの提案を受けた場合、取締役会は提案内容自体に即して、それが本源的な株主価値にプラスになるか虚心坦懐に検討する必要がある。さらに平時から、アクティビストの目で自社の弱点を検討する事前対応が重要になる。・ 多くの日本企業にとって、ソニーの事例はあるものの、アクティビスト・ヘッジファンドの台頭は未だ「対岸の火事」と思われるかも知れないが、機関投資家の投資活動は国境を越えており、今後の情勢には注意が必要である。さらに進んで、アクティビストの視点を「鏡」として自社の経営方針を厳しく再検討することは、単なるアクティビスト対策を超えて、自社の経営体質強化と株主価値向上に資するものと思われる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1050569015577333888
  • NII論文ID
    120006809318
  • NII書誌ID
    AA1285312X
  • HANDLE
    10086/31022
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • IRDB
    • CiNii Articles

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