明曠『天台菩薩戒疏』「教摂」における化法の四教 ―智顗『菩薩戒義疏』「階位」との比較を中心に―

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抄録

『梵網経』の注釈書である智顗『菩薩戒義疏』(智顗疏)の「階位」と、その智顗疏を受けて著されている明曠の『天台菩薩戒疏』(明曠疏)の「教摂」は、化法の四教を論じている点において共通している。しかし両疏を比較・検討すれば明曠疏の「教摂」は智顗疏を継承していないことが明らかとなる。明曠疏は特に、仏意を明らかにした『法華経』に基づき、円教によって『梵網経』を注釈するという態度を表明していることに特徴が見られる。また比較を通して明らかになった、智顗疏と異なる明曠疏の説は、おおむね智顗や湛然の諸著作に基づいているものである。一方、智顗疏の階位説は大半が『法華文句』や『法華玄義』の依用であり、一部において浄影寺慧遠の説も参照している。以上のような両疏の差異は、同じく化法の四教を論じていても、智顗疏は階位、明曠疏は教判という関心の相違によって生じたものと考えられよう。

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