中心性頸髄損傷の病態と治療

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タイトル別名
  • チュウシンセイ ケイズイソンショウ ノ ビョウタイ ト チリョウ
  • Pathogenesis and prognosis of cervical central cord injury

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1954年Schneiderらによって提唱された急性中心性頸髄損傷は,外傷性頸髄不全損傷のなかで,神経症候学的に下肢よりも上肢に強い運動障害,感覚障害をきたす症候群であり,脱臼や骨折を伴わない非骨傷性頸髄損傷の多くを占める。病理学的には,頸髄横断面での中心部の損傷,すなわち灰白質および白質の内層が主に損傷された病態として捉えられている。近年の分子生物学的研究手法の進歩に伴い,脊髄損傷後の1次損傷,2次損傷および瘢痕形成にいたる局所での組織反応が明らかにされつつある。受傷後早期のMRI診断で,麻痺の予後予測がある程度可能になっており,T1等信号/T2等信号が良好で,T1低信号/T2高信号が一般に不良である。薬物療法として,メチルプレドニゾロン大量療法が行われてきたが,近年,その効果を疑問視する報告が相次ぎ,呼吸器・消化器合併症などの副作用の報告も多い。新たな薬物療法の開発を目的として,顆粒球コロニー刺激因子投与の臨床試験も開始された。脊髄圧迫がない例では,一般に保存治療が選択されるが,脊柱管狭窄を伴う脊髄圧迫例で麻痺が重度,あるいは麻痺の増悪を認める場合は除圧術が考慮される。しかし,保存療法と手術療法を比較した質の高い研究は少なく,手術適応については議論の余地が多い。保存療法と手術療法の多施設前向き無作為共同研究が本邦で開始されており,今後のさらなる検討が期待される。

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参考文献 (45)*注記

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