60秒間全力ペダリングによる乳酸性無酸素エネルギー容量の測定について (1)

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[緒言] ヒトの筋収縮エネルギーの供給過程は燐原質系、解糖系、有酸素系に分類される。運動の初期あるいは激しい運動では、運動に要するエネルギー需要と生成される有酸素系エネルギー供給過程との間に不均衡が生じる。この場合には、無酸素的エネルギー供給過程によるエネルギーの補充が必要になってくる。無酸素的過程は燐原質系過程と解糖系過程に分けられているが、燐原質系過程によるエネルギーは全力運動では約8~10秒で枯渇することが分かっている。したがって、1~2分間の運動では解糖系過程が量的に最も重要なものとなる。爆発的な全力運動においては燐原質系のエネルギーが約8~10秒という僅かな時間で枯渇するのに対して、解糖系のエネルギーは、ATPの合成エネルギーを多量に供給できるが、その過程において筋収縮の疲労物質となる乳酸の生成を伴うために全力運動では40~60秒で筋収縮の停止を余儀なくされてしまう。従来、有酸素系のエネルギー供給過程の能力の測定方法が確立されているのに対して、多くの競技が無酸素過程の能力という要因に大いに依存しているにもかかわらず、無酸素系エネルギー供給過程の測定の研究は少ない。無酸素的エネルギー供給過程の能力は最大酸素負債量として測定がなされてきた。しかし、その測定には非常に長時間を要することや、特殊な設備を要するために実験室等での実施に限られていた。さらにMargariaら (6) は、この中を 非乳酸性 (燐原質系) 酸素負債と乳酸性 (解糖系) 酸素負債に分けられることを指摘している。また、Åstrand (1) は、酸素負債とされるものの中には、乳酸を処理するためとは別に2.0~2.5lの酸素摂取が起こること、さらに燐原質系のエネルギー分解によって1~1.5lの酸素に相当するエネルギーを生成していることを指摘し、これらを考慮にいれると酸素負債のうち4lまではの乳酸処理に関与しないものであり乳酸性の酸素負債ではないとしている。燐原質系のエネルギー供給過程によるパワーについては、Margariaら、生田らが、いわゆる最大無酸素パワーとしてそれぞれ階段駆け上がりと、自転車エルゴメータを用いた非乳酸性パワーの測定方法を提言している。しかし、乳酸性パワーもしくは乳酸性容量についての測定法は少ない。本研究は解糖系のエネルギー供給能力の測定方法について、自転車エルゴメータを用いた方法の検討を行うものである。特に、パフォーマンス・テストとして作業量を中心にその分析を行うこととする。

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