福祉思想と生命

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タイトル別名
  • フクシ シソウ ト セイメイ
  • Welfare Philosophy and Life

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抄録

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近年の福祉は、国家からの一義的な給付による福祉国家論を超えて、市民一人ひとりによって構成される福祉社会の姿を望ましいものとする動きがある。しかしながら、それは必ずしも順調に進んでいるとは言い難い現実に直面している。日本では、かつて福祉制度・社会保障の量的充実が進められた高度経済成長期とは異なり、望ましい福祉の姿を実現していくためにはその基本原理に遡った考察や議論が求められる。 本稿では、まず前半において、歴史的に福祉を振り返りつつ「危機」の時代ごとに福祉や社会保障の理念や思想が、消極的なものからより積極的なものへと発展してきた大きな流れを概観する。そして、このような制度を支える、福祉の思想的な次元を積極的に取り上げることが重要であることを示し、また、特に日本のこれからの福祉を考えていくうえで再評価することができる糸賀一雄の福祉思想を取り上げる。 続いて後半では、これからの新たな福祉思想のあり方を考える。この場合、主観的な実践に留まりやすかった前近代的な福祉から、国家社会的保障にまで発展してきた背景には、福祉と近代科学との相互作用があったことが挙げられるが、こうした「福祉」と「科学」に関する流れを踏まえ、科学思想における「生命」を基本コンセプトにすえた福祉思想の可能性について考察してみたい。

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