「デイジー・ミラー」について -モダニティの観点から-

機関リポジトリ Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • On“ Daisy Miller: A Study” -From the Perspective of Modernity-

この論文をさがす

抄録

「デイジー・ミラー」は、ヘンリー・ジェイムズの最も広く読まれ、研究された作品の1 つといえるだろう。この小説は、当時人気のあった旅行物語であると同時に、「国際テーマ」を取り上げた作品の嚆矢と見なされている。モダニティの観点から、この小説はさまざまな解釈の可能性を持って再読する価値があるといえる。いくつか例を挙げると、登場人物は単純化されており、より深い解釈が必要である。ヒロインの弟は、ほぼすべてのもの、人物に対しアメリカがベストという発言を繰り返し、現在のアメリカ第一主義を髣髴とさせる。アメリカン・マネーの経済力は Daisy が欲しいものを手に入れる手段として、物語の中で繰り返されているが、その源である父親については息子や妻によって言及されるだけで、経済力としての存在としてしか扱われていない。アメリカ・ドルの力は今でも世界中で支配的な力を持っていることを再考慮する必要がある。  ヒロインの Daisy は「アメリカの浮気娘」として単純化されており、彼女は物語を通してヒーローの Winterbourne を当惑させている。 Winterbourne は、女性の美しさを「観察および分析することに夢中になっている」ため、Daisy の闊達な自発性に不思議の念を感じずにいられない。この2 人の人物造型や関係性は、従来とは異なる視点から解釈することが可能である。  この論文では、この古典的な物語に新たにアクセスし、モダニティの観点から解釈したいと考えている。ここでのモダニティの観点とは、男性と女性の主人公の関係、経済力、市場の拡大、商品化された文化などである。さらに、都市小説, 紀行小説としての側面についても言及していく。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ