EKHGにおける運行及び運行危険

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タイトル別名
  • Betrieb und Betriebsgefahr im EKHG
  • ホンヤク EKHG ニ オケル ウンコウ オヨビ ウンコウ キケン
  • EKHGニオケルウンコウオヨビウンコウキケン

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抄録

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オーストリアの鉄道及び自動車責任義務法において,自動車の運行概念は,広く解釈され,このことで被害者の救済の拡充が図られた。その一方で,自動車のどのような危険が,この帰責を正当化するのか,必ずしも明らかなものとはならなくなり,評価の根拠を徐々に失っている状況にあった。まさに判例の状況は,数多くの事案類型において,カズイスティックな判断を示し,類型相互の判断プロセス・帰結が矛盾を示す状況にあった。  EKHGは,自動車の危険を考慮し,その保有者に厳格な責任を帰責するものであり,その理由付けを今一度確認することで,明確な危険責任賦課のための評価の根拠を形成することを目指す。本論文では,現在の交通状況において,相当数の自動車が密になって交通に関与していることから,自動車単体の速度に注目するのではなく,従来の通説・判例が支持する交通工学的な観点が前提となる。しかしその一方で,自動車の危険責任が課される理由は,伝統的には速度であったこと,さらに,技術の進展により,他の自動車の速度も上がったことから,例えば停止している自動車と走行している自動車との相対的な速度差が,非常に問題となることから,ここに危険責任を自動車保有者に帰責する理由付けを求める。このようにして自動車保有者の危険責任の根拠を明確にすることで,さらに,保有者の帰責の範囲の判断においても,速度による危険の実現という視点を重視すべきであり,従来の判例にみられた相当因果関係は,こうした視点と相いれないから採るべきではなく,むしろ,危険性関連という考え方でもって,帰責の範囲を画していくべきである。  こうした自動車保有者の危険責任の根拠づけ,帰責の範囲の画定の仕方を前提に,従来問題となってきた事案類型のうち,例えば,自動車が道路上で停止している場合の事故は,相対的な速度差が問題となることから,EKHGによる規律に服するものの,自動車を作業機械として用いる場合や乗降中の事故といったものは,こうしたアプローチから自動車保有者への危険責任としての帰責は正当化できない。  最後に立法的な解決として,こうした特別法の解釈は,危険責任の一般条項化の可能性を強く推進するものであること,とくに,20世紀初頭に自動車保有者の危険責任を導入するに際して既により一般的な射程を持った危険責任の議論がなされており,この観点から,現在のオーストリア法で改正提案として示された危険責任の一般条項化を支持することができる。

収録刊行物

  • 比較法雑誌

    比較法雑誌 54 (3), 21-69, 2020-12-30

    日本比較法研究所

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