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- 富士山南斜面における森林限界の上昇メカニズム
- フジサン ミナミシャメン ニ オケル シンリン ゲンカイ ノ ジョウショウ メカニズム
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十分な標高(3776m)をもち噴火の年代が新しい富士山は、森林限界の形成過程を解明するために好適な対象である。最近の噴火は、1707年に起きており、南東斜面に宝永火口(2693m)を形成した。この火口に近い南斜面では、植生は回復途上にあって、現在2500m付近にある森林限界は、将来は西側斜面と同じ2800mまでは上昇するものと予想される。したがって、現在の森林限界の成り立ちを調べることは、森林が上昇する過程や、森林限界移行帯が形成されるメカニズムを跡づけ、予測することにつながると期待される。富士山南斜面の標高2500m付近では、幅150~200mにわたって森林限界移行帯が認められる。近年約40年間の空中写真から、カラマツの上限付近では、わずかながらカラマツの数とサイズが増加していることが確かめられた。この森林限界移行帯のなかのカラマツは、その偏形化の程度によって5種の樹型タイプに分類できる。この移行帯のなかでは、上端から下方へ向かって、矮生型、立上り型、ハタ型の順に樹型タイプが分布し、樹高も密度も増加していく。そして移行帯下部では、先端対称型と全体対称型のみが分布する。立上り型、ハタ型、先端対称型は、現在では幹が鉛直方向に向かって伸長しているが、下枝の伸び方から、過去に矮生型であった時代があることがわかる。これらの樹型タイプでは、成長の初期にある期間にわたって矮生型をとった後に、鉛直方向への伸長を開始していると考えられる。移行帯の上端の矮生型カラマツは、冬季に強い季節風を直接に受けて幹の伸長はできないが、自身で風を弱める働きをすることで、下方に分布しているカラマツの伸長を助けているのである。これらの結果から、次のような仮説がたてられる。1.森林限界の上昇過程の第一段階として矮生型カラマツが定着する。2.やがてその山頂側に新たな矮生型カラマツが定着することで、風が弱まり幹が立上り始める。3.山頂側のカラマツが増えるにつれて、環境はよりいっそう緩和されて幹の伸長がすすみ、偏型化も軽減して正常な成長ができるようになると考えられる。将来にかけてもこれを繰り返しながら、カラマツの移行帯は温量指数が許す限り上昇を続けるであろう。温量に制限された標高で安定している森林限界移行帯は、このような過程を経て形成されたものと思われる。
Journal
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- Mount Fuji Research
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Mount Fuji Research 3 1-12, 2009-03
富士山科学研究所