ナーガラージャ型ガードストーンの造形の展開と造立年代の考察-ガードストーンの形式と関連作例との比較を通して-

書誌事項

タイトル別名
  • Study on the Development of Nāgarāja Guardstone Images and the Consideration of their Chronology-Focusing on the Form of Guardstone and Related Examples-

抄録

ガードストーンは、仏教の守護や土地や時代の繁栄を象徴するものとしてスリランカの寺院や王宮趾の入口の両側に対になって表される浮彫である。ナーガラージャ型ガードストーンは、ガードストーンの中でも時代的に最も新しく造立されたもので、現在も数多く残っている。稿者は、卒業論文「スリランカのガードストーン研究―ナーガラージャ型ガードストーンの様式による年代考察―」において、ナーガラージャ型ガードストーンの造立年代の推察を試みた。その際、①装身具の表現、②上半身から下半身にかけての人体表現、③侍者の表現の3つの造形的特徴に着目し、スリランカの菩薩像やインドのガナ像などの関連作例と比較することによって推定を行った。最終的に、ナーガラージャ型ガードストーンの展開は大きく3期に分けられると結論づけた。すなわち、第1期は7〜8世紀、第2期は最盛期の8〜9世紀、第3期は12世紀の造立とした。卒業研究では、比較の対象とした関連作例の多くはスリランカのものであった。しかし、スリランカの仏教美術はインドの作例から多大な影響を受けており、より詳細な造立年代を推定するためには、スリランカとインドの交流関係や関連する作例と比較、考察する必要がある。そのため本稿では、ナーガラージャ型ガードストーンの造形的特徴をより詳細に分析し、造形の展開を探るとともに、スリランカやインドの菩薩像やヒンドゥー教像などの関連作例との比較を通して、ナーガラージャ型ガードストーンの造立年代をより精査することを目的とした。具体的な考察の展開は以下の通りである。 まず第1章では、スリランカとその周辺地域であるインドと東南アジア各国にどのようなナーガラージャ像が展開・分布しているか整理した。そして、それらの造形的特徴を抽出・比較し、各国間の影響関係や特にスリランカとの影響関係が強い地域を見出した。 続いて第2章では、スリランカと関係が深いと考えられる南インドとの関連について、歴史やこれまで考古学上で発見されているものや仏教美術の作例を挙げ、二国間にどのような影響があったのかについて概観した。 最後に第3章では、ナーガラージャ型ガードストーンの造形的特徴について、①満瓶と②腰布、③侍者像の3点に着目し、ガードストーンの造形の展開や分布にどのような変化があるか考察した。そして、スリランカやインドの菩薩像やヒンドゥー教像、ガナ像などの関連作例と比較し、ナーガラージャ型ガードストーンの造立年代の推定を行った。

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