浮世絵に見る浴衣の動向

書誌事項

タイトル別名
  • Trends in Yukata Fashion Through Ukiyo-e
  • ウキヨエ ニ ミル ユカタ ノ ドウコウ

抄録

浴衣は江戸時代に「湯上りの身拭い」から「夏の庶民の普段着や外出着」に分化したとされる。本稿は、その背景に袖形の変化が関係しているのではないかという仮説を立てたうえで、浴衣を描いた浮世絵を178点抽出し、用途・袖の形状と仕立て・染織に着目して調査した。その結果、「湯上りの身拭い」の浴衣は「広袖」を基本に、女物は天明期(1781‐89)には「丸袖」が見られ、広袖の袖口下を千鳥掛けした浴衣も広まった。寛政期(1789‐1801)には丸袖に千鳥掛けが見られ、文化期(1804‐18)には広袖の千鳥掛けに加えて、狩衣の袖括りのように大小の刺縫いで袂部分を曲線に縫った浴衣が現れた。文政期(1818‐30)にはかがり糸が太くなり、袖下に大小 の刺縫いや丸袖に太糸で袖かがりされて多様化した。天保期(1830‐44)以降は「角袖」となった。一方、男物には刺縫いや袖かがりは見られず、天明期に広袖から角袖に変わり始め、文化期に広まった。以上より女物の袖形の変化により浴衣が普段着や外出着に変化したことが実証できた。また、浴衣の染織は、縞や絞りがそれぞれ全体の 2 割を占める一方、中形の模様染は 4 割と多く、中形が浴衣の代名詞とされた点が浮世絵からも確認できた。

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