国家との関係性からみたプロフェッション史研究―わが国監査プロフェッション史研究へのインプリケーション―

書誌事項

タイトル別名
  • State-centered Approach for Analyzing Professionalization of a Profession of Auditing in Japan
  • コッカ ト ノ カンケイセイ カラ ミタ プロフェッションシ ケンキュウ : ワガクニ カンサ プロフェッションシ ケンキュウ エ ノ インプリケーション

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説明

わが国の公認会計士という職業は,第二次大戦後に,新たに制定された証券取引法における監査証明の担い手として創設されたものであり,実態として,国家によって“生み出された”ものである。こうした公認会計士制度の創設に対する比較史的パースペクティブからの研究は,これまでほとんどなされてこなかった。 本研究は,わが国の公認会計士職をいったん“プロフェッション(profession)”として捉えたうえで,比較史的観点から,わが国の公認会計士職の形成と発展のプロフェッション化プロセスについて検討し,その独自性を明らかにすることを目的としている。とりわけ本稿では,とくにプロフェッションと国家の関係性を中軸に据え,比較史的視点から日本の監査プロフェッション化のプロセスを彫琢することを企図している。その目的を達成するために,本稿では,会計(監査)プロフェッションが,どのような国家との関係性のもとで生まれ,また,どのようにして,国家との一定の関係を維持しながら,プロフェッション化を推進していくのかを理解するために必要な基礎的,理論的な考察を行う。 続く第2章では,まず,プロフェッション社会学において国家とプロフェッションとの関係がどのように捉えられてきたのかを概括する。そこでは,Terence JohnsonやEliot Freidson のようなパワー・アプローチのなかでどのような位置づけがなされたのかを探る。第3章では,国家との関係,とりわけ国家の構造や国家の政策への影響というファクターを中心に捉える比較史的な理論枠組みに関する議論の進展状況を見ていく。さらに第4章で,コーポラティズムの視点から,政策形成をめぐる国家機関とプロフェッションとの関係性について論究する。そこでは,プロフェッション団体と国家機関との間の相互行為の性質と,そこにおけるプロフェッション団体の特質を析出・検討する。第5章で,本稿で捉えた理論的展開が会計(監査)プロフェッション史研究にどのようなインパクトを与えているのかを考察・分析する。とりわけ,会計士協会というプロフェッション団体の利益をどのように理論的枠組みに組み入れていくかに焦点を当て,わが国の公認会計士協会に対しての評価を可能とする前提を提示する。最後に,わが国の公認会計士職にみられる日本の“会計(監査)プロフェッション化”に対するインプリケーションを明らかにしながら,結論を述べる。

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