<論文>「子ども」にとっての生活保護という経験 --生活保護受給世帯で育ったある若年女性の生活史調査から--

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  • 長澤, 敦士
    京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • <Originals>The Experience of Recipients of Public Assistance for Children : Based on A Life History of a Young Women who Grew up in Households on Welfare
  • 「子ども」にとっての生活保護という経験 : 生活保護受給世帯で育ったある若年女性の生活史調査から
  • 「 コドモ 」 ニ トッテ ノ セイカツ ホゴ ト イウ ケイケン : セイカツ ホゴ ジュキュウ セタイ デ ソダッタ アル ジャクネン ジョセイ ノ セイカツシ チョウサ カラ

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抄録

「子ども」にとって「生活保護を受給する」ということはどのように経験されるのか. 本稿では, 「子どもの貧困の経験」という視座から, 生活保護受給世帯で養育された若年女性の生活史を分析の対象として, 「子ども」にとって「生活保護を受給する」ということが人生の中で, どのように意味づけられているのかについて検討した. そこで, 本稿では「生活保護を受給する」ということに付随する経験として, (1)ケースワーカーによる家庭訪問と(2)生活保護費の活用という出来事に関する語りに焦点を当てた. (1)の出来事に関する語りの分析からは, ケースワーカーによる家庭訪問は「子ども」にとっては他の訪問者と同じ位相で意味づけられていた. そこでは, ケースワーカーという存在は他の訪問者と同じように, 自分たち親子の生活のしんどさを助長する〈敵〉として意味づけられる場合があることが明らかになった. (2)の出来事に関する語りの分析からは, 生活保護費を含む家計の〈やりくり〉を保護者ではなく, 「子ども」が担っている場合があることが明らかになった. この出来事に関する語りからは, その家計の〈やりくり〉を通じて「子ども」は自分の意味世界において, 家族内における親に対する自分の優位性を正当化するための語りの資源となっていることが明らかになった. しかし, このように家計の〈やりくり〉をはじめとしたケアする存在としての自分を通じた「子ども」の自立性は, 「子ども」が社会的に孤立する側面も合わせ持っていることが示唆された. 考察では, 子どもの貧困に関する研究において生活保護制度を「生活保護を受給する」ということとして, 「子どもの貧困の経験」の一部として捉え, 子どもの貧困の研究における分析対象の主題として用いることがどのように貧困の中にある子どもの生活に対するより豊かな理解を可能にするのかということを提示した.

収録刊行物

  • 人間・環境学

    人間・環境学 30 31-45, 2021-12-20

    京都大学大学院人間・環境学研究科

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