対話法による共者性の習得 : バーナード・マラマッドの文学と教学

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  • Learning Anotherness through Dialogics: The Multicultural Writings and Teachings of Bernard Malamud

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本稿は、ユダヤ系アメリカ人のBernard Malamudの作品において、どのように「多文化主義(multiculturalism)」が構築され実践されているかを検証する。特に注目した作品は“The First Seven Years”や“The German Refugee”などの短編およびThe Assistantなどの長編であり、これらにおいて「他者性(otherness)」が「共者性(anotherness)」へと変容していることを発見することで、作者独自の多文化主義が実現されていることを論証する。\n以上の点を論じるうえで重要なことは、文学の役割である。Malamudの文学作品には、文学作品を媒介として人物たちが関係を深める場合が往々にしてある。すなわち、文化的背景の異なる人物たちは、同一の作品を読むことで相互の交流の契機を見出し、結果として自己に対する「他者」は「共者」として認識される。そして相互の交流は、Mikhail Bakhtinが唱える「対話法(dialogics)」によって促進される。具体的には、上記に挙げた作品の主要人物たちは、話すことによる意思疎通という「外的な対話(external dialogue)」と、書くことによる意見交換という「内的な対話(internal dialogue)」を同時に実践している。それにより「ユダヤ系」と「非ユダヤ系」という二項対立が相克され、ついには人物たちは相違を認識したうえでの共者間の交流を実現するに至る。\nさらに本稿では、多文化主義が教育においても重要であることを説く。文化的背景という点においては、多くの場合、学生と学生ならびに教師と学生は異なる人間である。この意味において、多文化な環境(特に大学)における人間同士の共者性を育む場は教室であり、そこで文学作品を読むことは多文化主義を実践することと不可分である。かくして、Malamudの「文学(writings)」は理念的かつ実践的な「教学(teachings)」でもあると結論する。

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