森林河川の懸濁物質・ダム湖の底質における生物利用性放射性セシウム量の評価

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of bioavailable radiocesium in the sediment in forest river and dam reservoir
  • シンリン カセン ノ ケンダク ブッシツ ・ ダムコ ノ テイシツ ニ オケル セイブツ リヨウセイ ホウシャセイ セシウムリョウ ノ ヒョウカ

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抄録

本研究では,森林からダム湖へ流入・沈積する土砂に含まれる生物利用性放射性Cs量の経年変化の把握のために,福島県南相馬市の横川ダム湖を対象に,ダム湖流入河川における浮遊性懸濁物質ならびにダム湖心部における不撹乱底質を3~4年間採取し,試料中の交換態・酸化物態・有機態の放射性Cs濃度をBCR法(Community Bureau of Reference)による逐次抽出試験によって評価した。その結果,河川懸濁物質中の全137Cs濃度・生物利用性137Cs濃度は経年的に低下し,そのうち生物利用性137Cs(交換態・酸化物態・有機態の合計)の割合は12.8~26.8%であった。また採取時点の先行降雨量が多いほど懸濁物質中の有機態137Csの割合が有意に小さかったことから,一連の降雨イベントの初期ほど山林土壌表層の有機物に蓄積された137Csが流亡し,河川に供給されやすいことが示唆された。ダム湖心部の底質中137Csのうち生物利用性137Csの割合は9.3~30.4%であり,底質表層2cmにおける生物利用性137Csの割合は経年的に低下した。また底質中の生物利用性137Csの割合は深度方向に高くなる傾向が見られた。このことから,底質粒子においては事故後湖底に沈積した時期が早いほど,エイジング効果による137Csの粘土鉱物層間への固定化が進行していないことが示唆された。

収録刊行物

  • 陸水學雜誌

    陸水學雜誌 82 (1), 1-16, 2021-02

    松本 : 日本陸水学会

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