米麦二毛作体系における麦わらの水田雑草抑制機構に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • Study on the mechanism of paddy field weed control by straw in rice and wheat or barley double cropping system
  • ベイバク ニモウサク タイケイ ニ オケル ムギワラ ノ スイデン ザッソウ ヨクセイ キコウ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

本研究では,北部九州における今後の麦わら適正処理技術を確立するために,麦わらのすき込み処理と焼却処理の違いが雑草の発生消長および水稲生育に及ぼす影響について,現地圃場試験で検討するとともに,ポット試験や発芽試験などを通じて麦わらのすき込み処理が雑草の発生におよぼす作用機構の解明を行った。現地圃場において,麦わらの処理方法の違いが水田雑草の発生と水稲生育に及ぼす影響を調査したところ,雑草発生の抑制効果は焼却に比べてすき込みした方が高かった。また,水稲の生育はすき込みで分げつが抑制されるものの,出穂後の登熟が向上し,増収する傾向がみられた。さらに,麦わらの雑草抑制効果についてポット試験で確認したところ,オオムギ,コムギいずれの麦わらをすき込んだ場合にも,各種の水田雑草に対して強い抑制効果が認められた。雑草発生抑制効果は経時的に低下したが,水稲収穫時期の秋頃から麦作の出穂期の翌年春頃まで観察することができた。麦わらの処理量としては実際に現場で施用されるレベルの20~40kg/aで十分な雑草抑制効果が認められ,この結果から麦わらの処理は焼却よりも全量すき込みが適していると考えられた。さらに,この雑草抑制作用の機構を解明するために,アレロパシー活性が強いとされるオオムギについて,その生わらおよびその焼却灰の浸漬水を用いて検定植物(コマツナ)種子の発芽への影響を調査したところ,生わらは顕著に発芽を抑制し,わらの焼却灰ではその効果が生わらの場合と比較して劣ることが明らかとなった。この傾向は,浸漬水を作成する際の土壌添加の有無に係わらず同様に見られたことから,発芽抑制作用は土壌微生物による麦わらの分解代謝産物ではなく生わらあるいはその焼却灰から直接水中に浸出した物質の関与が考えられた。そこで,LC/TOF-MSを用いてオオムギ生わらおよびその焼却灰の浸漬水中に含まれるフェノール性物質の特定を試みたところ,5種類の物質の関与が特定でき,その中でも特に(±)-2-フェニルプロピオン酸の関与が示唆されたことから,実際にコマツナを用いて発芽試験を行ったところ,2ppmの濃度でコマツナの発芽は顕著に阻害され,これによりオオムギわらによる雑草抑制作用の多くの部分を説明することができた。

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