除染後斜面における放射性セシウムの経時的・空間的輸送

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タイトル別名
  • Temporal and spatial transport of radiocesium on a slope after scraping surface soil off
  • ジョセン ゴ シャメン ニ オケル ホウシャセイ セシウム ノ ケイジテキ ・ クウカンテキ ユソウ

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抄録

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故により放射性セシウム(Cs)などの放射性物質が放出され,環境を汚染した。空間線量低減のため,汚染された地域では宅地から水平方向に半径20mを目安とした除染が行われた。しかし,除染対象範囲に裏山が含まれる箇所では,宅地から半径20m以遠の斜面上部に未除染地が残存している場合がある。地表面に降下したCsの大部分は土壌表層に存在し,放射性物質の大部分は表面流出水により斜面上部から下部へと移動すると考えられる。したがって,斜面上部の未除染地から斜面下部の除染が実施された区域にかけてCsか表面流出水とともに移動し,再汚染を引き起こすことが懸念される。そこで本研究では,除染後の斜面におけるCs輸送を明らかにすることを目的とした。福島県相馬郡飯舘村北部の除染が実施された宅地の北側の南向き斜面において,2015年4月から2019年2月にかけて,年間数回リター層を含む表土(黒ボク土)を採取し,Ge半導体γ線検出装置により134Csと137Cs濃度を測定した。採取地点は,斜面上部より未除染部,上部,中部,および下部,2016年4月より最下部を設定し,各高度について水平方向に3地点を設定した。積算降水量と積算Cs濃度のグラフの傾きが連動する傾向にあることから,Csは斜面上を表面流出水と共に流下したと推察された。未除染部と上部ではCs濃度の急激な増加が見られたことから,未除染部よりさらに上方の未除染斜面がCsの供給源であると考えられた。134Csと137Csの半減期(それぞれ約2年と約30年)を考慮した濃度変化をみると,134Cs濃度は放射性崩壊で予測される値に収束しつつあった。一方で,137Cs濃度は中部以下の高度において放射性崩壊で予測される値を下回ることが多かった。また,下部および最下部では2017年以降の積算137Cs濃度のグラフの傾きが著しく小さいことから,Csは斜面表面を下方へと流下しつつ,土壌中を鉛直下方向にも移動した可能性がある。

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