鶏のアデノウイルス感染症の現状と対策

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タイトル別名
  • Present situation and countermeasures for fowl adenovirus infections in chicken
  • ニワトリ ノ アデノウイルス カンセンショウ ノ ゲンジョウ ト タイサク

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抄録

鶏アデノウイルス(fowl adenovirus,FAdV)は鶏から分離されるAviadenovirus属の5種のウイルスの総称である。FAdV感染症は,2010年前後から主にブロイラーでの発生報告が増加した。主要な病型は封入体肝炎,アデノウイルス性筋胃びらんおよび心膜水腫症候群であった。さらに最近,Siadenovirus属ウイルスの感染と関連する鶏の巨脾症の発生例が報告された。加えて,未知のアデノウイルスに因ると推察される伝達性ウイルス性腺胃炎の発生例も報告された。FAdVは理化学的感作に抵抗性が高く,高率に養鶏場を汚染しており,垂直感染および水平感染により伝播する。この特徴がFAdVに対する診断と対策を難しくしている。FAdV感染症に対しては,発生状況,症状,肉眼剖検所見,病理組織所見,血清学的検査ならびに微生物学的検査の各結果から総合的に診断する必要がある。FAdV感染症への対策として,一般的衛生対策の他に,欧米やアジアの一部ではワクチンが実用化されている。しかし,わが国にはワクチンはなく,一部の養鶏場ではいわゆる馴致と呼ばれるワクチンを用いない対策が行われている。しかし馴致には,効果の不確実性および他病原体伝播の危険性などの欠点がある。このような状況から,ワクチンの開発と野外応用が期待されている。

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