地域社会に寄り添うアート、抵抗力をもつコミュニティ ─ コミュニティアート/SEA/アウトリーチ/ソーシャル・インクルージョンという変遷から見えてくるもの─

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タイトル別名
  • チイキ シャカイ ニ ヨリソウ アート 、 テイコウリョク オ モツ コミュニティ : コミュニティアート/SEA/アウトリーチ/ソーシャル ・ インクルージョン ト イウ ヘンセン カラ ミエテ クル モノ
  • Art that stands by the community and a community of resistance ~What we can see from the transition of community art, SEA, outreach, and social inclusion

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抄録

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地域社会のなかで誕生したコミュニティアートについて、それが発生した社会的背景や発展経緯を通して、文化芸術が社会のなかで担う役割や意義をグローバルな視点で考察する。まずはイギリスの産業革命後に起きた社会変革と文化環境による地域課題と向き合う人々について探求し、地域社会における文化芸術の立場や受容の変遷に言及していく。  イギリスが日本に与えた影響を探ることで、近代化にともなう社会問題の増幅とアクティヴィズムの発展から文化的影響を探求する。20世紀後半はアメリカ合衆国に視点を移し、1970~80年代のオルタナティヴスペースの開発や地域再生を目的とするジェントリフィケーション、社会課題に向き合うソーシャル・エンゲイジド・アートといった地域社会を舞台にした芸術活動に影響を精査する。しかし、引き続きイギリスの文化政策や活動の影響が見られ、特にアウトリーチやソーシャル・インクルージョンといった教育活動の影響を考察していく。  現代社会には、さまざまな難題が起こり混迷している。地域社会には身の回りの課題が山積していて、多くの人々が解決の糸口を探っている。この課題解決を望む自治体やコミュニティは、アーティストの創造力に期待をして、コミュニティにおける文化事業(SEA 含む)を手掛かりに課題解決を急ごうとしている。しかし、アーティストたちは、アートが本当に課題解決になるのかと疑っている。彼らは、自らのクリエイティヴィに邁進したいだけかもしれない。アートが社会に関わるのは大前提としながらも、アートは毒にも薬にもなると証言するクリエイターがいる。コミュニティ課題に挑むクリエイターたちは、アートが優先するのか、課題が優先するのかを問われることが多い。  そのような解決型アート(SEA を含む)を解明していくにあたり、根源となる文化的理念について哲学から考察しようとした。芸術と哲学との間に重なり合う論考をドゥルーズとガタリの著作研究を行うエリザベス・グロスの文献を参考にした。正直のところ、まだまだ初期段階の論考に過ぎず、芸術に相応しい哲学もしくは芸術のための美術史や美術批評に変わるものは、発展段階にあるといえる。したがって、ソーシャル・エンゲイジド・アートの先行研究であるクレア・ビショップやグラント・ケスターの論争は、この考察の手がかりになった。

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