「芸術家」としての統治者

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  • ゲイジュツカ トシテノ トウチシャ

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三島由紀夫『わが友ヒットラー』は、1934年6月末に起きた、エルンスト・レーム、グレーゴル・シュトラッサーをはじめとする、ヒットラーに対峙すると見なされた勢力が一斉に粛清された「レーム事件」ないし「長いナイフの夜」事件を素材として構築された劇で、ヒットラー、レーム、シュトラッサー、及び資本家のクルップの4人のみを登場人物として、ヒットラーがレームとシュトラッサーの粛清を決断するまでの経緯を描いている。歴史的事実に基づきながら、両名を葬るに至る事情には三島的創意が盛り込まれている。そこに見て取られるのは、登場者たちに寓意的に託された、三島の二・二六事件に対する認識と同時代の1960年代の趨勢に対する批判にほかならないのである。

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