回帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いた輻輳制御アルゴリズムのLinuxカーネルへの実装と評価

抄録

限られたネットワーク資源をより効率的に運用するためには,ネットワーク資源を適切に分配することが重要である.ネットワーク利用者に分配できるネットワーク資源の量はネットワーク利用者の増減やネットワーク設備の状態によって変化するため,動的にネットワーク資源を分配するためのアルゴリズム(輻輳制御アルゴリズム)が必要である.従来の輻輳制御アルゴリズムは人の手でネットワークに合わせて実装されてきたが,データセンター内の通信や衛星通信など,多くの環境で通信が行われるようになった現代では,すべての環境で人間が設計した輻輳制御アルゴリズムを利用することが現実的ではなくなりつつある.そこで,この問題を解決するために,機械学習を利用して輻輳制御アルゴリズムを自動的に設計する手法が提案されている.機械学習を応用した輻輳制御アルゴリズムのひとつである RNN-CUBIC は,パケットロス時に送信量を調節する従来のアルゴリズムである CUBIC を発展させたアルゴリズムである.このアルゴリズムは,機械学習を応用した他の輻輳制御アルゴリズムに対して,(1) ネットワーク状況の変化に適応し,(2) より低い計算負荷で輻輳制御が行えるという利点があると考えられる.しかしながら,RNN-CUBIC を実際のオペレーティングシステムに実装したとき,このアルゴリズムが十分な性能を維持できるかは明らかになっていない.そこで,本研究では RNN-CUBIC を Linux カーネルに実装し,Linux 上の RNN-CUBIC で通信を行い,そのスループットを計測した結果を評価し,RNN-CUBIC が CUBIC よりも高いスループットを発揮する場合があることを明らかにした.

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