アメリカ合衆国憲法の制定過程(1) : アメリカ諸邦憲法の三つの類型とアメリカ的価値の創出

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タイトル別名
  • The Making of the Constitution of U.S.A. in the First Stage : A Study on the First American Constitutions and the Creation of the American Values
  • アメリカ ガッシュウコク ケンポウ ノ セイテイ カテイ(1)アメリカ ショホウケンポウ ノ ミッツ ノ ルイケイ ト アメリカテキ カチ ノ ソウシュツ

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抄録

論文

アメリカ合衆国の憲法は二層構造となっている。第一階の憲法は、アメリカの独立宣言を相前後して、13 の英領植民地において制定された各邦の憲法である。それは「第一アメリカ憲法」とも称されている。それを土台にして、1787 年に既存の各邦の連合体を連邦国家に再編成する際に「第二アメリカ憲法」の連邦憲法が制定された。従って、二層制のアメリカ憲法を理解するためには、まずその土台の「第一アメリカ憲法」を知る必要があろう。母国から分離・独立を果たした各邦では、共和政の導入が必然であったが、それがアリストテレスの言う堕落した国制に転落しないように、その構成員が徳を持つ人間であることを前提にした新しい政府の制度設計が行われた。その際の国家の基本法の憲法の制定における指導原理は、イギリスの憲政の革新的政治原理がピューリタニズムを媒介にして受容された啓蒙思想によって人類の普遍的な政治原理へと発展せられた政治理念であった。それは、人民主権論、天賦人権説、国家設立の方法としての社会契約説、以上の諸原理に基づく人民の幸福を踏みにじる腐敗・堕落した政府を取り換える人民の革命権、ロックの「信託政府」論を採用するが、権力者に対する徹底した不信感からの公職者の人民による選出、公職者の在職期間の制限、公職の交替制、三権分立制、などの今日の自由民主政の基本原理である。後に「アメリカ的価値とアメリカ的イデオロギー」となるこうした政治原理がどのようにして英領植民地において形成されたのか、そしてそれらが各邦の憲法にどのように反映されたのか、ヴァージニア邦憲法、ペンシルヴェニア邦憲法、マサチューセッツ邦憲法の三つの異なる類型の憲法を取り上げて解明した。次にこれらの憲法がすべて歴史上初の「成文憲法」であった点についても解明に努めた。憲法制定者たちが母国からの分離・独立の戦いにおいて学んだことは、自由と所有権をその中核とする個人の基本的人権を守る事が政府の第一目的である点を公職担当者のみならず、人民一般にも周知させ、かつ政府の権力活動がこの第一目的から逸れないようにそれに歯止めをかける規範を文章化して同時代人のみならず、子々孫々にも遵守させる必要性を痛感した点である。従って、すべての邦憲法は成文憲法であり、それらに共通するのは、第一部が「権利の章典」、第二部が政府の組織原則となっている点である。そしてこの成文憲法の形式は後の近代自由民主政の憲法の原型となっている点をも明らかにした。

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