胎児静脈管血流速度波形の解析の意義と臨床応用への可能性

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  • タイジ ジョウミャクカン ケツリュウ ソクド ハケイ ノ カイセキ ノ イギ ト リンショウ オウヨウ エノ カノウセイ
  • Time Interval Analysis of Ductus Venosus Flow Velocity Waveforms for the Management of Fetal Growth Restriction

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抄録

胎盤機能不全に起因する胎児発育不全(fetal growth restriction : 以下FGR)には未だ有効な胎内治療が確立しておらずその予後を改善するためには, 詳細な観察と適切な時期での分娩の決定が最も重要となる. 妊娠36週以降の成熟した胎児のwell-beingの評価には胎児心拍陣痛図(cardiotocogram : 以下CTG)が用いられるが, それ以前の週数における未熟な状態の評価には一定した評価が困難であるため超音波検査による胎児血流の計測を併用する. 特に, 妊娠32週未満の早期からのFGRでは, 一方では娩出による未熟性のリスクを, もう一方では待機による子宮内での胎児死亡のリスクを常に念頭に置きながら娩出のタイミングを見計らっていく必要がある. 特に娩出時期を検討する上では, 胎児の循環動態として臍帯・胎盤以外の3つのシャント機構が存在するユニークな循環動態を把握しておくとともに, 特に胎児状態の悪化を鋭敏に反応する静脈管血流波形の変化を正確に評価するよう心掛ける必要がある. 静脈管血流波形は, 心房収縮と心室収縮・拡張といった心周期を反映した2峰性の血流波形を呈し, 正常な循環動態では全妊娠期間を通してforward flowを呈する. 波形の各成分の名称は, 心房収縮により最も遅くなる谷の部分をa波, 心室収縮により第1峰の部分をS波, 心室拡張による第2峰の部位をD波と称する. これまでに, FGRの予後を改善すべくその娩出時期に関してGRIT study(the Growth Restriction Intervention Study)とTRUFFLE study(the Trial of Umbilical and Fetal Flow in Europe)の2つの研究論文が報告され, この領域におけるエビデンスレベルの高い内容をしめされてきたが, 静脈管血流波形の有用性に言及しているのはTRUFFLE studyである. 本稿では, これまでに報告されてきたFGR の管理指針に言及するとともに, 静脈管血流波形を新しい視点から解析してきた我々の研究成果について解説を加える.

Since no effective in utero treatment has yet been established for fetal growth restriction (FGR) caused by placental insufficiency, close observation and timely delivery decisions are of paramount importance to improve the prognosis. Fetal cardiotocogram (CTG) is used to evaluate the wellbeing of the mature fetus after 36 weeks of gestation, however, ......

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