立山松尾峠のオオシラビソ林における稚樹の定着マイクロサイトと12年間の動態

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タイトル別名
  • Microsite traits and dynamics of Abies mariesii seedlings in the subalpine coniferous forest at Matsuo pass, Mt. Tateyama, central Japan
  • タテヤマ マツオトウゲ ノ オオシラビソリン ニ オケル チジュ ノ テイチャク マイクロサイト ト 12ネンカン ノ ドウタイ

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抄録

多雪山地における亜高山帯針葉樹林の更新過程の特徴を明らかにするために,立山松尾峠のオオシラビソ林において稚樹の定着マイクロサイト(地表,マウンド,根張り,倒木)と12年間(2004-2016)の動態を解析した。林床の面積の95.6%を占める地表上で定着した10-50cmの稚樹の本数割合は14.2-15.7%にとどまり,面積で3.0%しかないマウンドに47.1-50.0%,面積0.7%の根張りに32.5-33.3%の稚樹が集中していた。この林分における積雪下地表面温度の実測結果によると,地表では雪腐れ病の蔓延を回避できる氷点下の温度環境の期間が4日,回避できない0℃一定あるいはプラスの期間が220日に及んだのに対し,マウンドでは前者が42日,後者が162日であり,菌害のリスクの高い温度条件が長期に続くことが地表での定着を阻害し,回避できる温度の期間が長い非地表マイクロサイトヘの依存性を高めたと考えられる。幹長10-50cmのオオシラビソ稚樹は小さいものほど数が多いL字型のサイズ分布を示し,12年間の死亡率6.1%/年,加入率7.5%/年,回転時間14.7年で,個体が激しく入れ替わりながらほぼ同じサイズ分布を維持した。このことはこれらの稚樹が稚樹バンクとして機能していることを示している。

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