尾瀬ヶ原池溏の表層水における水系腐植物質動態

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タイトル別名
  • Aquatic humic substances dynamics in surface water of bog pools in Ozegahara mire
  • オゼガハラチトウ ノ ヒョウソウスイ ニ オケル スイケイ フショク ブッシツ ドウタイ

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抄録

泥炭湿原に形成される池溏中の水系腐植物質(AHS)は,重要な炭素構成物質である。池溏のAHS動態を把握するために,尾瀬ヶ原における39カ所の池溏の表層水を2015年と2016年の8月に採水し,AHSの量と質の測定を行った。溶存有機物(DOM)とAHS濃度の平均値は,それぞれ6.9 mg-C L-1,5.0 mg-C L-1であり,DOMに占めるAHSの割合は約70 %であった。EEM-PARAFAC法により,AHS様成分が2つ検出された;Oze-1(Ex/Em = < 252,336/485 nm),Oze-2(Ex/Em = < 252,309/406 nm)。AHS濃度とOze-1と-2の蛍光強度は2015年よりも2016年の方が有意に高かったが,DOCに占めるAHSの割合とOze-1/Oze-2比に差はみられなかった。池溏のAHSの供給と消失は平衡状態にあると考えられる。また,AHS濃度,Oze-1と-2の蛍光強度は,電気伝導度および一般生菌数と正の相関が得られ,AHSは池溏の主要な溶存物質であり,バクテリアの重要な栄養源であることが示唆された。さらにこれらの値は,池溏面積/周囲長比に正の相関を示し,溶存酸素,面積,周囲長に負の相関を示した。池溏におけるAHSは泥炭を介して湿原水とともに池溏内に浸出し,大きな池溏ほど太陽光による光酸化分解を受け消失すると考えられる。このような供給と消失過程が尾瀬ヶ原池溏のAHS動態を特徴付けていると推察された。

収録刊行物

  • 陸水學雜誌

    陸水學雜誌 82 (3), 227-238, 2021-09

    松本 : 日本陸水学会

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