尾瀬ヶ原における湿原地形と河川・池溏環境と洪水に伴う変遷

書誌事項

タイトル別名
  • Geomorphology and hydrological process and environmental change of rivers and bog pools in Ozegahara mire
  • オゼガハラ ニ オケル シツゲン チケイ ト カセン ・ チトウカンキョウ ト コウズイ ニ トモナウ ヘンセン

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抄録

尾瀬ヶ原は面積約8 km2の本州最大の泥炭地・高層湿原である。気候変動の湿原への影響を探るため河川水位などの洪水情報と地形情報から湿原における洪水の影響を明らかにすることを目的に研究を実施した。河川の水位(2016~2017年)は2016年秋の大雨による洪水で上ノ大堀川の河川水位7 m以上に達し上田代は冠水し,2017年融雪時に上昇して上ノ大堀川で約2 mとなった。上田代周辺では融雪時に地表水位は0.2 mであったが,研究見本園では1.6 mの地表水位があり,冬季の積雪下にも多くの水で覆われた。研究見本園では春先の気温が高い時に融雪し度々積雪下で地表の水位上昇がみられた。2018年3月上旬には池溏KA1-08では水位上昇があり,表層水や地下水の流入が多くみられた。池溏KA1-04では中央部に早い融雪が見られ,地下水の流入が大きいと考えられた。2019年5月にも融雪洪水が発生し,上田代の池溏は滝のような流れを受け,池溏底質の洗堀や湿原への流出が観察された。洪水前後に粒度分析を行った結果,洪水後の池溏には数μmの非常に小さな球形無機粒子があり,水深1 mの深さより深い池溏はしばらく濁った。直後にUAVの空撮によって詳細な濁りの分布が明らかになった。上田代の表層から0.9 m深に無機成分の多い層が見られ,過去約1000年前の洪水履歴とみられた。福島原発事故由来の137Csは,中田代で平均5,919 Bq m-2,上田代8,594 Bq m-2で洪水の多い上田代では流域からの流入により放射能が増加したと考えられた。

収録刊行物

  • 陸水學雜誌

    陸水學雜誌 82 (3), 151-169, 2021-09

    松本 : 日本陸水学会

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