我が国の採卵鶏飼養における窒素成分の輸出入量

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  • Nitrogen balance on import/export of feed and excretion for poultry layer in Japan
  • ワガクニ ノ サイラン ケイ シヨウ ニ オケル チッソ セイブン ノ ユシュツニュウリョウ

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抄録

わが国では,採卵鶏飼養で使われる濃厚飼料の大部分を輸入に依存している。しかし,飼料としての窒素の輸入量と,鶏糞として排出される窒素量の貿易収支は不明である。そこで本研究では,2019年または2019年度の各種統計資料を用いて国内での鶏卵生産に使われる飼料として輸入された窒素成分量と,鶏糞として排泄された窒素量を推定した。また,鶏糞の堆肥や肥料としての輸出状況も調査した。農林水産省の統計データから採卵鶏の飼養羽数や鶏卵生産量,廃鶏の処理羽数や重量を,飼料月報から飼料原料使用量を,食料需給表から濃厚飼料の国内自給率を引用した。まず,成鶏めす1羽あたりの窒素収支を算定した結果,成鶏めす1羽が1日に飼料から摂取する窒素量は2.99 g/日,鶏糞としての窒素排泄量は1.63 g/日となり,窒素の排泄率は54.5%となった。我が国全体で採卵鶏飼養にかかる窒素収支を算定したところ,飼料からの窒素供給量は約18万t/年,鶏糞として排泄される窒素排泄量は約9.6万t/年となり,窒素の排泄率は54.6%となった。輸入飼料由来の窒素摂取量は約16万t/年,窒素排泄量は約8.5万t/年と推計された。我が国の鶏糞肥料・堆肥の輸出先上位3ヶ国は,ベトナム,中国,韓国であり,他に台湾,タイ,マレーシア,フィリピン,ミャンマー等にも輸出されていた。2019年の日本からこれら諸外国への鶏糞の肥料・堆肥としての輸出量は約16万t/年で,国内で排出されると推定される生鶏糞約800万t/年の2.0%程度だった。また,輸出される鶏糞の中の窒素量は3,528 t/年となり,これが窒素供給量に占める割合は2.0%,輸入飼料由来の窒素供給量に占める割合は2.3%だった。今後は鶏糞を高付加価値化した肥料とすることで,国内の耕種農家に対する利用の促進を図るとともに,世界的な窒素循環の面からも鶏糞の輸出に対する取り組みが必要である。

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