日本の近代化と経済エリートの文化的位置―「実業家」をめぐる社会学的考察―

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  • ニホン ノ キンダイカ ト ケイザイ エリート ノ ブンカテキ イチ : 「 ジツギョウカ 」 オ メグル シャカイガクテキ コウサツ

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近代日本において殖産興業を先導した経済エリートは、多様な公職に就任するとともに特徴的なハイカルチャーを生み出すなど、政治的・文化的に独特な存在感を示した。彼らがエリート的な地位を占めた過程には、二つの差異化が重要な意味を持つ。「実業」の模範者として自己を正当化する過程、そして、エリート文化の指標となる象徴財を獲得する過程である。前者は、封建的な賤商意識からの離脱を志向するものである。明治期半ばには、勉学(とりわけ「虚学」)や学校教育とは異なり、また、非道徳的な「虚業」とも異なる実地の民業が「実業」として正当化される。彼らはそうした思想的な趨勢に倣いながら、明治後期において新聞・雑誌で自らを道徳的な「実業家」として語った。また、後者は、明治初年に上流社会で流行した能楽や茶事を自己の地位にふさわしい文化的アイテムとして彼らが積極的に取り入れ、趣味のネットワークを形成した過程である。二つの差異化の過程は、勉学・学校教育の貶価や伝統文化への傾倒という点で、プレモダンへの志向という特徴を共に持つ。次世代の実業家も反知性主義や伝統主義を表明することが多く、そのことは昭和初期という社会の変革期に至って、再び経済エリートの社会的な立ち位置を複雑なものとした可能性がある。

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