総説 シンガポールによる技術協力の考察

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  • Discussion Report on Technical Assistant Provided by Singapore

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抄録

シンガポールは,マレー半島の先端に位置し,東京23区と変わらない国土(約728km²)に約545万人(2021年時点)の多民族が暮らす世界有数の都市国家である。1965年のマレーシアからの分離独立時には湿地帯に掘立小屋が立ち並ぶ街が広がっていたが,シンガポール“建国の父”と呼ばれるリークワンユー初代首相を中心とした人民行動党(People’s Action Party,PAP)政権の強力なリーダーシップにより,世界銀行が1993年のレポートで“東アジアの奇跡”と名付けるほど急速な経済成長を記録した。小国ゆえに資源等の制約をもつシンガポールは,人材育成,最先端の技術の導入,生産性の向上に一貫して取り組むことで生産性を高め国際的な競争力も維持してきた。また,シンガポールは独立時より多民族が生活をする国家であるが,高度技術を持つ外国籍の人材や単純労働にあたる移民も多く受け入てきた。まさに,様々なバックグラウンドを持つ多くの人種が共存するアジアの縮図となっている。そのためシンガポール政府は,独立後の早い段階から様々な施策を実行し,多民族の融合とシンガポール国民としてのナショナル・アイデンティティを醸成させ,多民族国家であることをシンガポールの強みとすることを図ってきた。  現在,東南アジア諸国連合(ASEAN)の多くは労働集約型の産業を中心に順調に経済成長しているが,中進国の罠に陥ることが懸念されている。また,タイなど一部の国は少子高齢化社会を迎えており,いかに生産性を維持するか,その施策の策定と実行が必要となっている。その際に同様の経験に立ち経済成長を遂げてきたシンガポールの事例が参考となると考えられる。そこで,本稿では,先行研究等の既存資料をもとに①これまでのシンガポールの国家開発,経済発展の歴史と戦略,②シンガポールの開発途上国向け技術協力について整理し,成果と課題等を明確にする。

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