カール・ポランニーの「二重運動」と過疎村落問題の関連性 : 新潟県佐渡市のフィールドワークから

書誌事項

タイトル別名
  • The Relevance of Karl Polanyi’s "Double Movement" to the Problem of Depopulated Villages : A Case Study of Rural Sado City, Niigata Prefecture, Japan

抄録

本論は、近代化と新自由主義による影響という共通項から、ポランニーの主著の一つである『大転換』における二重運動の理論と、日本の佐渡島における過疎村落の事例とを関連付けて論じるものである。ポランニーは『大転換』において、自己調整的市場という考えの虚構性を示している。ポランニーは、市場経済が拡大すると、社会に破壊的な影響が現れてしまうため、それに対抗する社会の防衛運動が必ず起こると述べた。これを二重運動と呼ぶ。このポランニーの二重運動に類似した現象が、日本の過疎村落で起こっている。新潟県佐渡市関集落では、人口流出が起こっているにも関わらず、空き家が取り壊しや売却の対象にならず、空き家に仏壇を残し、定期的に通っていたりする事例がみられる。この背景には、佐渡島の村落社会において、家屋敷、仏壇、墓は単なるモノではなく、イエの象徴であったことが関係している。伝統的な村落社会で価値の高かった、家屋敷、仏壇、墓は、市場経済の論理では値段が付けられなくなってしまう。それ故に佐渡の人々は空き家や仏壇、墓を売らずに維持し続けるのである。この佐渡の空き家の仏壇・墓の維持という事例は、市場経済の論理への抵抗感・ためらいが原因であると考えられる。

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