贈与と信託的構成

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タイトル別名
  • Gift and Trust Stucture (Doctrine)
  • ゾウヨ ト シンタクテキ コウセイ

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抄録

民法の贈与法の研究は従来、贈与の無償性が重視され、契約としての贈与の効力は制度上、運用上、有償契約と比べて弱いものとして扱われてきた。そのなかで、負担付贈与の効果については贈与の目的、負担の履行状況などが考慮され、贈与の契約としての効果(拘束力)が強化され、贈与における一つの類型(制度)が形成されている。  贈与は、制度上、運用上、確定的に完全に所有権が移転することを前提にしているが、負担付贈与のいくつかはこのような前提を修正すべきことを示唆している。贈与契約の効果として所有権が相手方に移転することに注目すると、贈与の効果は譲渡法(物権法)と契約法(債権法)の双方を考慮することができる。信託法理を基礎にする信託的構成という捉え方は物権法と債権法の交錯を理論的に捉えることにより、総合的に信託の真髄である当事者間の公平と弱者保護を追求することを可能にする。また、贈与における信託的構成は贈与当事者の権利・義務関係を実質的に捉え利益衡量を行うことを可能にし、当事者の権利関係を公平かつ適正に規律することに資するものと考える。

収録刊行物

  • 法学新報

    法学新報 127 (5-6), 69-103, 2021-03-24

    法学新報編集委員会

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