読者をフロー状態に導くための拡散モデルを用いたVR空間生成手法

抄録

スマートフォンやタブレットの普及によって動画視聴が主流となったことにより読書離れが急速に進んでいる.読書離れには読解力の低下や正確な文章表現の困難化という懸念が指摘されている.読書習慣を身に付けるためには,読書のフロー状態に入ることが重要である.そこで,読書のフロー状態を読書習慣のない人に体験させることで読書人口が増えるのではないかと考え,本研究では小説の文章から VR 空間画像を生成するシステムを提案する.読書のフロー状態とは読書量が多い人ほど体験しやすい物語への没入体験のことを指す.普段読書をしない者にとって,(i) 周囲の音や視覚情報などによる集中力の欠如,(ii) 知らない言葉や表現を含む文章から状況をイメージしづらい,という 2 つの要因が読書のフロー状態への導きを妨げていると考えられる.そこでそれらの問題を解決するため VRHMD と拡散モデルを使用した疑似的な没入体験を繰り返し行うシステムを研究することにした.本研究では小説の文章を情景描写した VR 空間内で読書が可能なシステムを開発した.読書のフロー状態に入るためには文章の理解をスムーズにすることが重要である.本システムは小説の文章から情景描写用のテキストを自動的に抽出し,それを基に VR 空間を自動生成する機能を備えている.評価実験の結果,読者を VR 空間に没入させることで文章の意味理解を支援することが可能であることが確認された.VR 空間の提供により,読者はより臨場感を感じながら物語に没頭することができ,文章の内容をより深く理解することが示唆された.

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