ホイッティア70歳祝賀スピーチ事件をどう見るか : 『マーク・トウェイン自伝』における著者晩年の批評精神

書誌事項

タイトル別名
  • Mark Twain’s Speech at Whittier’s 70th Birthday Celebration : How Does Twain Revisit the Speech in His Autobiography ?
  • ホイッティア 70サイ シュクガ スピーチ ジケン オ ドウ ミル カ : 『 マーク ・ トウェイン ジデン 』 ニ オケル チョシャ バンネン ノ ヒヒョウ セイシン

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抄録

今や自身も70歳を迎えたマーク・トウェインは,1906年1 月,読者からの1通の手紙に触発され,封印していた28年前のホイッティア70歳祝賀スピーチ事件を振り返る。当時大きな衝撃をもたらしたその事件とは,ラルフ・W・エマソン,ヘンリー・W・ロングフェロー,オリヴァー・W・ホームズといった高名な詩人の名を騙る, 3 人の詐欺師を戯画化した彼のスピーチがアメリカ文学の権威を冒涜したと見做された出来事を指す。不明な部分がなお残るこの事件にあらためて向き合い,彼はみずから吟味する。  その結果,スピーチ原稿そのものは「才気煥発で,ユーモアたっぷり」の「申し分ない出来であり」,「無作法あるいは粗野」にはあたらず,そこに落ち度があるとは思えないことを確認する。つまり,当時なおも君臨したボストン中心の東部文学世界に,「揺さぶり」をかけた自身の西部的姿勢を是とする判断である。トウェイン本来のこの立ち位置こそが,おのれの作家人生を振り返る『マーク・トウェイン自伝』の批評精神と言えるだろう。  近年,本事件の見直しが進められており,トウェインという作家個人の側面にとどまらず,アメリカ文学・文化史の側面から,彼のスピーチが何を示唆するのかを問う議論がなされている。

収録刊行物

  • 人文研紀要

    人文研紀要 105 1-38, 2023-09-30

    人文科学研究所

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