プロレス文化史研究序説-日本プロレス史の物語論的解釈の一試論-

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  • Introduction to Study on the Cultural History of Professional Wrestling : An Attempt at Narrativizing the History of Japanese Professional Wrestling

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抄録

本論考は、サブカルチャーとしてのプロレスと、社会の物語の構図の変遷に関する、一試論である。大衆文化としてスタートした我が国のプロレスは、1980年代以降サブカルチャーの一分野としての側面を強くしていく。その時代史的背景を探るための基本作業として、本稿では見田宗介、大澤真幸による戦後メンタリティ史の社会学的議論に対照させることで、プロレスの時代史的な変遷を整理した。  今回の作業はあくまで思考実験的性格の強いものではあるが、特にプロレス興行のスタート時と見田のいう「理想の時代」のはじまり(1950年代前半)との一致、力道山の後継者としてのジャイアント馬場の全盛期と、見田のいう「夢の時代」(1960年代)との重なり、猪木新日本、馬場全日本の激しい興行戦争からプロレスのサブカルチャー化、さらには他団体化へと向かう1970年代から90 年代後半までの期間と、見田・大澤のいう「虚構の時代」との符号を確認することで、プロレスがサブカルチャー化していく時代史的背景とその意味を考える枠組みを提示できたと考える。  またこうした整理作業を通じて、70年代の猪木新日本VS馬場全日本の興行戦争のなかで新日本プロレスが仕掛けた対全日本差異化戦略が、後のプロレス文化のシミュラークル化に連なるだけでなく、当時のファンにとって1960年代末用の若者世代による世界的な「異議申し立て」のやり直し的側面を持っていた可能性を示している。

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