タイ人配偶者の否定表現に関する事例研究 : 自然習得と教室学習を比較して

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書誌事項

タイトル別名
  • Case study of negative expressions in Japanese by Thai spouses : A comparison of natural acquisition and classroom learning
  • タイ ジン ハイグウシャ ノ ヒテイ ヒョウゲン ニ カンスル ジレイ ケンキュウ シゼン シュウトク ト キョウシツ ガクシュウ ヲ ヒカク シテ

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抄録

本稿は、関西在住外国人配偶者の中でもタイ語を母語とする自然習得者を対象に、否定表現を分析したものである。自然習得者と教室学習者と比較し、分析を行った結果、以下の点が明らかになった。A)  自然習得者と教室学習者には否定形式の選択には大きな差はなく、標準語形「ない」が優勢であった。対話者である筆者とインフォーマントは初対面に近いため、フォーマルスタイルとして標準語形を選択し、言語形式を対話者に応じて使い分けている可能性が指摘できる。B)  自然習得者の、中間言語体系に見られる母語話者と異なる特徴(以下:中間言語的特徴)には個人差が認められる。自然習得者の中間言語的特徴は、動詞の活用混同型や、品詞に関わらず「じゃない」を付加するストラテジーなどが見られた。このような特徴は、教室学習者の学習初期段階にも観察されるものであった。これらの事象は、学習環境に関わらない習得の普遍的な特徴であると言える。C)  自然習得者では、「なくて」「なければ」など否定形式語尾の活用が回避され、基本形「ない」で代用されていた。一方、教室学習者では否定形式語尾の活用が適格に使用されている。自然習得者と教室学習者において異なる点であると指摘できる。以上のことから、自然習得者の否定表現は、各品詞に応じて「ない」「くない」「じゃない」の形式を選択し、使用することができるが、一部、中間言語的特徴がまじる。また、テ形とタ形といった否定形式語尾の活用は難しく、基本形で代用するという傾向があるということが明らかになった。

収録刊行物

  • 阪大日本語研究

    阪大日本語研究 27 137-161, 2015-03

    大阪大学大学院文学研究科日本語学講座

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