「教育産業」の経営方針とリスク認識─有価証券報告書を対象として─

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  • Management Policies and Risk Perceptions of the “Education Industry” : Content Analysis of the Annual Securities Report

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抄録

本研究では、今日の「教育産業」をリードする上場25社の経営方針とリスク認識について、その有価証券報告書に掲載されている「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」と「事業等のリスク」の内容分析を行った。計量テキスト分析(共起ネットワーク分析とKWICコンコーダンス)の結果、まず経営的な方針としては、以下の諸点が抽出された。1.「教育サービスの提供」がこの業界の中心的なテーマであり、また社会的な貢献にもつながると認識されていること、2.高校・大学受験などの学習指導が中心ではあるが、コロナ禍により加速化した「オンライン」授業への対応が新しい動向であること、3.教育領域だけでなく福祉・保健系の領域にも参入しようという方向性があること、4.これらは少子化という市場環境における中期計画となっていること、などである。またリスクの認識やその管理については、以下の点が示唆された。1.コロナ禍のような感染症と自然災害の発生が今日的な最大のリスクであること、2.とくに感染症のリスクはコロナ禍によってよりクローズアップされてきていること、3.また人材の採用・確保・育成や、4.個人情報保護の管理システムなど、5.これらの点はコロナ禍以前にも同様のリスクとして認識されており、教育産業には恒常的な問題であること、などの諸点である。 本研究は、経営やリスクにとどまらず、教育産業の社会全体に対するアピールや今後の課題など、その自己認識や組織アイデンティティともいえる側面についても示唆を得ることができた。今後は、異なるデータソースによる幅広な分析、ならびに経年的変化の分析などが必要である。

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