保健師課程の学生を対象に実施した放射線に関する授業の実践と評価

書誌事項

タイトル別名
  • Practice and Evaluation of a Class on Radiation Conducted for Students in a Public Health Nursing Program
  • ホケンシ カテイ ノ ガクセイ オ タイショウ ニ ジッシ シタ ホウシャセン ニ カンスル ジュギョウ ノ ジッセン ト ヒョウカ

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抄録

《目的》放射線災害は人々の暮らしに大きな影響を及ぼす。放射線災害は誹謗中傷や風評被害等による心理的な影響を及ぼすとされ、支援者は知識の提供だけではない住民とのコミュニケーションが求められる。筆者らは、2014年度から保健師の基礎教育等において、住民の暮らしの視点から放射線教育を行ってきた。本稿では、2022年度に「公衆衛生看護管理論」の授業において、保健師課程の学生を対象に放射線の授業を実施したため、授業内容とその評価結果を報告する。 《方法》2023年1月、主に3年次生を対象とした「公衆衛生看護管理論」の授業において放射線の測定演習(90分)と基礎知識の講義(90分)を行った。授業に参加した学生数は23名であった。評価として、事前・事後アンケートを行い、放射線の知識を問う問題(正誤問題20問)と、自由記載として放射線に関するイメージや放射線と人々の健康への向き合い方、感想等を尋ねた。また、授業への興味や関心、理解度、時間の適切性等をリッカート尺度で尋ねた。 《結果》学生23名中22名(95.7%)から同意を得た。放射線の知識(20点)の点数は、事前(平均点10.3、範囲6-15)から、事後(平均点15.9、範囲11-18)に上昇した。事前の放射線のイメージは、【身体に様々な害を与える】、【目に見えない、怖い、危ない】等の漠然としたイメージから、事後では【過剰に怖がる必要はない】、【線量によって影響が異なる】等の具体的なイメージに変化した。保健師として、放射線と人々の健康への向き合い方として、住民の理解度に合わせた説明の重要性や偏見をなくすための正確な知識の重要性が記述された。授業への興味や関心、理解度、時間の適切性については、ほとんどの項目が肯定的な回答であったが、「講義の内容は理解できた」の項目では2名(9.1%)の学生が「あまりそう思わない」と回答した。 《考察》福島第一原子力発電所事故から10年以上が経過し、対象の学生は当時ほとんどが小学生であった。学生の放射線に対する事前知識やイメージは十分ではなく、福島第一原子力発電所事故のイメージと関連していることが推察された。学生にとって福島第一原子力発電所事故の内容は教材としての効果が高い一方で、学生の経験における背景を理解することが重要である。放射線災害対応は長期にわたる。人々の暮らしを守る視点から、地域住民に関わることができる保健師の役割は大きく、今後も放射線教育を継続していく必要がある。

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