「多武峯縁起絵巻」考: 画面構成の特質について

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  • トウノミネ エンギ エマキ コウ ガメン コウセイ ノ トクシツ ニ ツイテ

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説明

奈良県桜井市多武峯の談山神社に伝来する「多武峯縁起絵巻」四巻は、藤原氏の始祖である鎌足の伝記を中心とし、これに多武峯寺の草創潭、興福寺関係の縁起、多武峯の僧に関する逸話および鎌足の尊影破裂の話を加えたもので、合計四十三段からなる。現在は四巻に改装されているが、「多武峯縁起」と記された外題の右下にそれぞれ「上之一」「上之二」「下之一」「下之二」と付記されており、本来は上下二巻であったことがわかる。\nさて、本絵巻には通常の絵巻とは異なる特徴がいくつか見られる。具体的に言えば、紙本ではなく絹本であること、詞書が和文ではなく漢文であること、しかもそれが画中に散らされた色紙形に書かれていること、そのため長大な連続画面が形成されていることなどである。これらの点については、先に各段の詞と絵の内容を概観した際にも簡単に触れたが、本稿では特に四点目に注目し、そこから生じる本絵巻特有の画面構成について考察することにしたい。また、中野玄三氏は本絵巻について、早くから障壁画形式の祖本の存在を示唆されている。極めて興味深い示唆であり、この点についても検討を加えることにしたい。なお、各段の事蹟名称および内容については注1の拙稿を参照されたい。

収録刊行物

  • 文化財学報

    文化財学報 (23), 21-36, 2006-03-01

    奈良大学文学部文化財学科

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