レッシングと 18 世紀啓蒙主義 : 啓示宗教から自然宗教へ

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タイトル別名
  • レッシング ト 18セイキ ケイモウ シュギ : ケイジ シュウキョウ カラ シゼン シュウキョウ エ
  • Lessing and the 18th Century Enlightenment : Returning Revealed Religion to Natural Religion

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説明

レッシングは戯曲『賢者ナータン』(1779年)においてユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれもがそれぞれ真実であると説くことによって、宗教対立の克服を目指した。歴史的に見て、これら3宗教は同じ母胎から生れ、同じ神を信奉している。この共通の母胎は「自然宗教」と、それに対して3 つの特殊宗教は「啓示宗教」と呼ばれる。啓示宗教を自然宗教に戻すこと。これがレッシングの理想だった。3宗教はなぜ分化したか。それは各宗教が特殊な教義を取り入れたためである。レッシングはキリスト教を特殊化した独善的な教義を断罪する。レッシングが『賢者ナータン』を書いたきっかけは、ハンブルクの哲学者ライマールス(Hermann Samuel Reimarus(1694-1768)の遺著『護教論-理性的有神論者を擁護して』のレッシングによる出版にある。ライマールスは熱心なキリスト教徒で、それだからこそキリスト教正統派の説く啓示や奇蹟、さらにはイエス・キリストの復活の真実性を疑い、嘘のないキリスト教を構築しようとした。過激な内容を含むその遺著をレッシングが出版すると、正統派のあいだから当然のことながら轟然たる非難の嵐が巻き起こり、彼はその弁明に追われた。彼と正統派のあいだの論争が激しくなると、ついに皇帝から論争を継続することを禁じられた。論争をつづけられない代りにレッシングが書いたのが、戯曲『賢者ナータン』であり、この作品には「自然宗教」を広めることによって世界平和を実現しようとするレッシングの熱い思いがこめられている。

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