古典期アテナイの職人に関する一考察

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タイトル別名
  • A Reconsideration of Contempt for Craftsmen in Classical Athens
  • コテンキ アテナイ ノ ショクニン ニ カンスル イチ コウサツ

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抄録

古代ギリシアにおいてポリスの中核を担っていたのは, 農民であった。これに対し, 職人の多くは外国人や奴隷であり, 手工業は市民にはふさわしくない俗業として蔑視の対象となっていた。古典期アテナイの文献史料を根拠にこのような傾向が指摘される一方で, 職人の中にはアテナイ市民も含まれていたことが確認されている。本稿は, 「移動」と「定住」という観点から, 市民権の有無にかかわらず共通する職人の性質を導き出し, 彼らが位置していた世界を意味する概念として, 「職人の世界」を設定する。さらに, 職人を指す言葉のうち, 職人蔑視を考察する上で最大の手がかりとなる「バナウソス」に注目し, この言葉が哲学者作品以外ではほとんど用いられていない理由について検討する。「職人の世界」が接近するという特殊な状況にあった古典期アテナイにおいて, 同時に「バナウソス」が用いられなくなっていったことは, 職人に対する不信感が薄れたことを意味すると考えられる。古典期アテナイの人々は, 閉鎖的な市民団を形成する一方で, 「職人の世界」を受け入れる開放性を有していたのである。

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