原生竹林の更新とその生態学的研究

HANDLE Web Site 被引用文献1件 オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Sylvicultural and Ecological Studies of a Natural Bamboo Forest in Japan.
  • ゲンセイ チクリン ノ コウシン ト ソノ セイタイガクテキ ケンキュウ

この論文をさがす

抄録

わが国には竹林が多いが, 自然林の状態に維持されているものは極めて少ない。 ところがわれわれは京都近郊に20数年以上全く放任された寺有林を発見した。 ハチクを主としマダケの混生する竹林で, 35°~40°の傾斜地に約1haのひろがりをもつ (Photo.1)。 母岩は角岩が大部分をしめ, 礫を大量にふくむ (Photo. 2)。 土壌条件についてはTable 1, 2, 気候条件についてはTable 3に示した。 林内の相対照度は人工 [Table omitted] 林に比べて小さい。 竹林内の動物相については十分な研究はできなかったが, 若干のデータを示した (Table 4)。 この林内で, 純竹林, 広葉樹の混生した部分, その程度の一層ひどい部分にそれぞれA, B, Cの3つの定置ワク (10×10m) をもうけ, 1952年以来9カ年間調査を行なってきた。 竹稈にはすべて木札をつけて発生年を附し, 位置, 太さ, 発生年などは分散図として記録した。 竹稈と林床植生の調査は, それぞれ2×2m, 1×1mワクを用いて, 隔年に測定を行なった。 各区の生立竹 (Table 5, Photo. 4, 5, 6) は一般施業林の伐竹前に比べていくぶん多い。 ただしC区はいちじるしく少ない。 束数や生産量でも類似の傾向がある。 生立竹の直径階別および枝下高階別本数分配の年次変動 (Table. 6, 7) をみると, A, B区では変動が少ないが, C区では本数の減少とは反対に1本1本の竹稈は向上している。 竹の生育型 (Table 8) としては, 千葉の人工林などに比して非常によい。 新竹発生量 (Table. 8, 9, 10, 11) は蓄積に対して10~5%で, 施業林に比して半減に近い。 広葉樹の混生も多すぎるとよくない。 新竹と枯竹の割合 (Table 12) からは, A, B区はかなり安定しているが, C区は竹の繁殖力が年々低下している。 病虫害竹 (Table 13) をみると, 一般の傾向に反して, 広葉樹の混生も, その割合によって必ずしも竹林の健全化に役だたないようである。 竹稈の寿命については, 従来正確なデータがえられにくかったが, 10年間の測定記録 (Table 14) によれば, 不良竹は数年で枯死し, 他は10年以上の寿命がある。 原生竹林の群落構造と遷移については, まず種類組成 (Table 15) についてみると, このような竹林は一般にスダシイ群団の途中相と考えられるが, A区では地形的にも土壌的にも竹以外の種が優占できず (Photo. 4), 新竹と枯竹の割合 (Table 12), てんぐす病の罹病率 (Table 13), 竹稈の分散 (Table 17), 広葉樹の成長 (Table 18, 19) などから, 少くともA区のような状態は地形的極相とみてよいと考えられる。 生活型組成 (Table 16) では, 千葉で調べている人工竹林に比して, 遷移の進行と地表の不安定性を示した。 分散図 (Fig. 1) からA/F比のような分散係数を算出して分布様式をしらべ, また分布型のあてはめをしてみると, 竹稈の分布は極めてランダムで単純ポアソン分布に近く, 長年安定した竹林での密度調節の結果とみられる。 ここにはかなり多くの広葉樹が侵入しているが, その若干のものは林冠部に達する (Photo. 7. Fig. 2, 3, )。 積算優占度であらわした種類組成表 (Table 15) やベルト・トランセクトの結果 (Table 18) から林内の木本の状況がわかるが, 基底面積の測定 (Table 19) によると, 木本の成長率は, 木本の多いC区でも案外高くない。 落葉層 (Table 20) をみると, A区はもちろん少ないが, B, C区の差は, 成長率の場合と同様, 案外多くなかった。

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ