結晶片岩型地すべりの移動機構の研究 : 特に地下水流と移動の関係について

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  • On the mechanism of the movements of the metamorphic rocks landslide : Mainly on the relationship between the ground water flow and the landslide movement
  • ケッショウヘン ガンケイ ジスベリ ノ イドウ キコウ ノ ケンキュウ トクニ

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抄録

結晶片岩型地すべりの一つの典型である徳島県善徳地すべり地において種々の調査を行なってきたが, 本報では主としてパイプヒズミ計による深さ方向の移動の測定結果およびボーリング孔における地下水位の観測結果から, 地下水と地すべり移動の関係について考察した。その結果, 地下水位の上昇が必ずしも降雨と対応していないこと, 地下水位の上昇と地すべり移動の間には必ずしも関係がみられないことが指摘できた。従来の調査研究によれば, 地すべりによる地表面の移動とその地下水位とはきわめて密接な関係を持ち, ある水位以上に地下水が上昇するとすべりが始まり, その水位以下にある場合は地すべりが起らない例が多いとされている。また地下水の地すべりに対する影響としては, 地すべり粘土の含水率が増加するとそのセン断強度が低下すること, 地下水位の上昇にともない間ゲキ水圧の増大によって有効応力が減少しセン断抵抗力が低下することなどがあげられている。ところが, 善徳地すべり地においては, 地下水位の上昇と地すべり移動の間に必ずしも関係が見られないことから, 従来の考え方では十分説明し切れない。そこで, 地下水位調査によってボーリング孔でかなりの流速を持った水流の存在が確認されていること, また, 地下の空ゲキの存在が推定されることから, 善徳地すべり地の場合地下水の間ゲキ水圧としての作用よりも地下水流としての浸食の作用が移動に影響を及ぼしていると考えられる。すなわち以下のような移動機構が考えられる。「地下水流の浸食によって地下に空ゲキを生じ, そのために上層の土塊が底面の支持を失って沈下し上下動が生じる。ある場合は土塊の沈下だけで留まるが, ある場合には土塊の沈下によって隣接する地盤との境界面において土層のかく乱―セン断抵抗力の低下が生じ, 沈下土塊または隣接する土塊が斜面方向にすべり水平動が生じる。」という機構が考えられる。

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