シカの食害が森林生態系の物質循環に与える影響 : 渓流水質の予備調査から

書誌事項

タイトル別名
  • The influences of deer overbrowsing on nutrient cycling in forest ecosystems : Preliminary study of streamwater chemistry
  • シカ ノ ショクガイ ガ シンリン セイタイケイ ノ ブッシツ ジュンカン ニ アタエル エイキョウ ケイリュウ スイシツ ノ ヨビ チョウサ カラ

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抄録

シカによる森林下層植生の喪失が森林生態系の物質循環に与える影響を明らかにするため, 京都大学芦生研究林内で防鹿柵を設置したU谷と設置しなかったK谷の各集水域末端と各集水域内の支流から5ヶ所ずつ渓流水を採取し, 水質を測定した.集水域面積が3ha未満の小集水域間では渓流水質が有意に異なったことから, 水質形成要因が空間的に不均一であることが示唆された.一方, 10ha以上の面積を持つ集水域末端では水質に差が認められず.集水域全体での水質形成機構はおおむね等しいものと考えられた.また, 柵設置後1年では渓流水質に変化が見られなかった.防鹿柵設置後の下層植生の回復は時空間的に不均一かつ漸次的であることが推測され, 集水域末端だけでなく水質形成要因の空間的不均一性を考慮できる小集水域も対象とした観測が望まれる.本調査地において小集水域を含んだ継続調査を行うことにより.シカの食害が生態系機能全体に及ぼす影響を解明できることが期待される.

特集 : ニホンジカの森林生態系へのインパクト: 芦生研究林

収録刊行物

  • 森林研究

    森林研究 77 77-87, 2008-12-26

    京都大学フィールド科学教育研究センター森林生物圏部門

被引用文献 (1)*注記

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