<論文>ジプシーの共同想起なき記憶行為と時間の経験 -- 南仏ジプシー巡礼祭に織りこまれた迫害の記憶と隔離の空間をめぐって
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- 左地, 亮子
- 日本学術振興会・京都大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Memory Practice without Collective Remembering and the Experience of Time among French Gypsies : The Memories of Persecution and a Space of Segregation in the Pilgrimage Town of the Camargue
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抄録
ジプシーは、歴史や過去に関心をもたない、ないしはそれらを忘却すると、しばしば指摘されてきた。それは、これまで彼らの多くが共同体の起源や歴史的な迫害といった過去の出来事を、公的な語りや記念追悼行為を通して共同想起してこなかったためである。しかし本稿では、こうした指摘が、人の記憶を「想起か忘却か」という問いのもとで論じてきた限定的な議論の枠組みに由来すると考え、そこで看過される記憶の領域として、明示的で集合的な想起と表象の実践に回収されるのでも、単純に忘却へと向かうのでもないジプシーの記憶行為を考察する。事例とするのは、2015年5月に南仏カマルグ地方の町で開催されたジプシー巡礼祭、及びその期間中に同町と近村で開催された、第二次世界大戦期ジプシー強制収容をめぐる追悼イベントでの出来事である。ここでは、ジプシー巡礼祭というジプシーと非ジプシーの融合を物語る祝祭の場に隔離の記憶が挿入されたが、その過去のコメモレーションに対する一般のジプシーの反応は無関心ともいえるものであった。本稿では、こうした共同想起を欠くジプシーの過去への態度を、他者の代表=代理の物語りの回避を目指す記憶行為として捉え直したうえで、過ぎ去らない過去を「持続する現在」の中で感受しながら生きる人々の時間の経験を明らかにする。
収録刊行物
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- コンタクト・ゾーン
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コンタクト・ゾーン 9 (2017), 34-71, 2017-12-31
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1050845760782138240
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- NII論文ID
- 120006373916
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- NII書誌ID
- AA12260795
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- ISSN
- 21885974
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- HANDLE
- 2433/228315
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- IRDB
- CiNii Articles
- KAKEN