作家安部公房への交差する眼差し 安部ねり『安部公房伝』書評

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type:Article

本論は小説家安部公房の娘である安部ねり氏が2011年に刊行した父の伝記『安部公房伝』(新潮社)について論評する。まず前半が本来の意味の伝記に当てられ、後半がさまざまな人へのインタビューからなるという本書の構成に目が向けられる。伝記の部分は父が娘に残した思い出というプリズムを通して作家の生涯を語るという独創性を持ちながら、そこに作家安部公房を知る人々の証言が重ねられるというポリフォニックな響きを持つ。また三部から成るこの伝記については、作家の妻が果たした役割、初期の詩集から小説家の誕生へ、そして人間科学をめぐる父と娘の見解の違いなどに焦点が当てられる。また友人や家族から芸術家、文学者、評論家に亘る人々へのインタビューの中では、亡き友人を巡るエピソードや、文壇との関わり、視覚芸術についての作家の考え方などが取り上げられている。本書において著者は父親の芸術の精神的継承者となり、この伝記自体が一つの文学作品となって作家安部公房の人間性を浮かび上がらせている。

オリジナル(フランス語版)は http://www.effet-de-vie.org/comptes-rendus にあり

Details 詳細情報について

  • CRID
    1050845762512687104
  • NII Article ID
    120005286468
  • Web Site
    http://hdl.handle.net/10212/2119
  • Text Lang
    ja
  • Article Type
    article
  • Data Source
    • IRDB
    • CiNii Articles

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