近代英国におけるフィランスロピーと諸言説

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タイトル別名
  • Conflicting Discourses on Philanthropy in Modern England
  • キンダイ エイコク ニ オケル フィランスロピー ト ショ ゲンセツ

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抄録

18世紀半ば以来19世紀を通し英国社会では, フィランスロピー(チャリティ)が多岐にわたって展開し公的な救貧法行政をしのぐほどの巨大な救済機能を果たしていた。本稿では, フィランスロピーにかくも重要な役割を担わせることを可能にした, 多くの同時代人の抱いていたフィランスロピー観/思考形式を明らかにすることを目指した。従来の研究では, 18世紀末以降, フィランスロピー実践に顕著な「転換」があったとされ, 「チャリティの不健全運営」および「チャリティの選別化」という当時盛んに論じられた事象は, 転換の証拠としてしばしば言及されてきた。しかし本稿では, 実態と言説の関係性に着目する言説分析の手法(言語還元主義とは異なる)をこれら諸事象にまつわる言説に適用しその結果, 論言説の内容はかならずしも実態とは一致せず, しかもしばしば対立しあう多様な諸言説の根底にはある堅固なコンセンサスがあることが析出された。このコンセンサスこそ, ふつう人々の意識にのぼらないフィランスロピーの思考形式であり, 終章では近代英国におけるこの思考形式と実践とが相補的に一種の構造をなしていると結論した。

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