"It's Milton. Always there" : The Devil's Advocate(1997)

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  • "It's Milton. Always there." : The Devil's Advocate(1997)

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抄録

1997年度公開のアメリカ映画The Devil's Advocateのプロットは、ある清廉な若手弁護士が幻想のなかで「ジョン・ミルトン」を名乗るサタンとその徒党によって誘惑されるというものである。その制作の背景には、現代のアメリカが病弊とも言える「訴訟社会」と化している現実があるのだろう。しかしながら、Milton研究および/あるいは文化(史)研究にとって興味深いのは、〈なぜ、ジョン・ミルトンなのか?〉という問題である。この名前は、贅言するまでもなく、イギリスの初期近代は、政教分離のなされていなかった激動の時代を生きた盲目の詩人思想家のそれに等しい。そこに生まれるのが、〈Miltonとアメリカの大衆文化〉という比較的新しい問題である。Miltonが叙事詩Paradise Lostのなかで活写したサタンの強烈なイメジが、宗教的に敬虔なアメリカ人の精神的深層に根づいて久しいことを想起すれば、当然のことながら、Miltonを読むことはアメリカの理解に不可欠な要件となる。そして、その中核にあるのがMiltonの描いた堕天使像に他ならず、その迫真性が日常的な恐怖感覚をアメリカ人に植えつけてきたことも首肯できるのである。本稿は、かかるアメリカ人の歴史発生的な意識が、映画という現代的な表現形式にどのような影響を及ぼしているかを、The Devil's Advocateの映像と長編脚本の台詞を中心に、Paradise Lostおよび福音書はRevelationからの引用等をからめて詳細に検証する試論である。

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