マレーシアにおける資本移動規制

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  • マレーシア ニ オケル シホン イドウ キセイ
  • Capital Controls in Malaysia

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抄録

アジア通貨危機(1997)で東アジア諸国から短期資本が大量流出した原因の説明としては,「ファンダメンタルズ論」と「金融パニック論」という2つの大きな流れがある。IMFは前者の立場をとり,タイなどの危機国からの支援要請に対し,莫大な資金援助をすると同時に,支援国の金融市場のいっそうの自由化や構造改革,総需要抑制政策を融資条件として強制した。一方,危機国の中でマレーシアだけはIMF支援を求めることなく資本移動規制を中心とした独自の政策によって経済の再建を行った。これは「金融パニック論」に基づいた対策を一国レベルで実施した例と見ることが可能である。マレーシアの政策の成功は,危機後の資本流出規制(1998)にのみ還元できるわけではなく,1994年の短期資本流入規制により,もともと短期資本の流入を抑制していたことが重要である。しかし,単独で資本規制を実施することは,投資先として回避されるリスクを伴う。そこで,国際的に短期資本の移動に規制を課し,一国のみが不利を被ることなく,投資の流れを短期的な運用中心から,途上国が希求する長期的な投資を増加させる方向へと移行させていく必要がある。

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